2009年7月5日日曜日

○○力、○○検定万歳!

タイトルは○○カ(まるまるか)ではなく○○力(まるまるりょく)です。紛らわしいですね。
○○にはお好きな言葉をいれてください。
ギターを愛する方はギター力、村上春樹を愛読されている方は村上力、
ウェイトレスのあけみちゃんが好きな方はあけみ力です。
今回は「流行語」と「ことばの乱れ」に関するお話です。

いきなり結論なのですが、言語学に「ことばの乱れ」なるものはありません。
より正確に言えば考察対象としていない、というべきでしょうか。
「ことばの乱れ」とはいかなる言説か、
「ことばの乱れ」が差す内容はなんなのか、
といった高次的なことを上から目線で語ったりはしますが。
今、ふと我が振りを見直してみたんですが、
「―――とはいかなる言説か考える」なんて、何か陰険でヤなやつっぽい響きですね。
ふむ、気をつけなくては。友達無くしたくないし。

新書のタイトルに登場するくらいの破竹の勢いで流行ってます。
「○○力」と「○○検定」。
誰が言い出したのかは分りませんが、考えた人商標登録しておけばよかったのに。
でもどうやら登録されていないので、ありがたくパブリック・ユーズさせていただきます。
ぜひとも、いつか「英語力力」「英語力検定」と題した本でも書こうと思います。
ちなみに内容と目的は「英語力とは何なのか考える力」と「英語力とは何なのか考える力を検定すること」です。
あー、ややこしい。

で、ですね、人間の性なのか、歴史は繰り返すのか、
新聞で読みました。(あとテレビでも見ました)
○○力だと!ケシカラン!!日本語が乱れに乱れとる!!!国語力の低下だ!!!
あっ、間違えて国語力だなんて言っちゃった。ちゃっかり、使ってるじゃん。

まぁ、それはともかくとして、別に乱れてなんかないんですよねぇ。
第一、ことばの乱れって何かわからないし。新しいことばってのは、常に狩りや非難の対象です。
○○に名詞(または名詞句、名詞節etc)を入れて、
「○○とその関連概念の1)包括的な知識量、2)実行時の質の高さ、3)その他定性面・定量面での秀逸さの度合い」を一発で言えるグレイトな語なんですよ!
意味がぼやけるという犠牲(例:あけみ力って何だ!?)もありますが、便利さとは常に何かと引き換えに得るものなので、ここは無問題です。

「ことばの乱れ」を語るのって主に誰なんだろうとふと思ったので、
新聞の内容検索なぞやってみました。今回の検索対象は読者投稿です。
朝日だったら「声」、読売だったら「気流」です。
めんどいので戦後からやってみたのですが、でるわでるわ「乱れ論」。
投稿には実名も含んでいるので、詳しい内容は伏せますが、
60年前から日本語は乱れ始まったようです。
無駄に省略するな!!!カタカナ語けしからん!!言語の乱れは文化の乱れだ!!とかとか。

もし、日本語が当時から乱れているとしたら、
その時に乱れを生んでいるとされていた人たち=主に若い人たち、
がそんな若い時の事を忘れて今の日本語の乱れを指摘しているわけです。
今ではご意見番的な立場の方々も若い時は乱れていたようで。
・・・あれ、でも乱れを指摘するってことは、
ご意見番のみなさまは今は乱れてないわけですよね。みごと更生したわけです!!
どうやって更生したんですか!?とても知りたいです。
ちなみに昔の「乱れ論」にも「意味のわからない新語をつくるな!!」というのがありました。
なんてデジャ・ブ。
そんな「乱れている」と指摘されている方々はご安心を。
いずれみなさまも指摘するようになります。「最近の日本語は乱れとる!!」と。
歴史は回る。

1 件のコメント:

  1. これ、G先生もまさに同じこといってました。
    常に昔からくりかえされてきたフレーズだと。

    町田健先生は、「言葉が乱れてる。けしからん」という「乱れ論」の唯一の良い役割としては、短い間にどんどん変化していくのをストップさせようとする、ストッパー的な役割(→ゆるやかに変化していく)言語社会的役割がある、といってました。

    まぁ、それ以外としては、言語学徒として、言語変化は当然のものだと思います。

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