2009年7月17日金曜日

異文化のせいで、ネイティブっぽくない-TOEFLのはなし-

自国の文化が、英作文の書き方に影響することがあります。

ただ、ネイティブ話者の採点者は、異文化に気づかずに、減点したり、訂正したりします。
勿論、採点者が、多文化に精通しているというのは、
大規模なテスト採点では難しいでしょう。

標準化されたテスト(standardized test)であるTOEFLの英作文セクションで、どういう内容がでてくるか、ご存知の方も多いかと思います。

家族のことと、学校のこと、教育のこと、、、英作文のお題に出てくるもの。

それらは、下記にETS (TOEFLをはじめ、標準テストを作っている非営利団体)によると、世界中の第二言語でも、容易にアクセスできるトピックだからだそうです。

"Topics dealing with education and family are quite common on standarized tests because they topics are easily accessible to L2 writers around the world." (参考:ETS (1996))

でも、これが、落とし穴。

家族や教育に関する、「あなたの意見を述べなさい」って、
文化によって、書く内容が変わってくることでしょうから。

「子供は親のいうことに従うべきかどうか?」
「制服着用についてどう思うか?賛成か反対か?」
「自分がやりたい学問を専攻すべきか、就職に役立つ学問を専攻すべきか?」

これらの質問は、「あなたの純粋な個人的意見」というよりも、「あなたのいる社会に即した、あなたの意見」を、結果として答えにもってしまいがちです。学校の存在意義が、組織・集団・上下関係重視なアジアと、個人重視な北米では、解答が大きく違ってくるでしょう。


たとえば、「マイケル・ジャクソンの年俸は高すぎると思うか?」「健康維持のためにあなたがすることは何か?」という質問に比べて、
各国文化によって、内容が変わりやすい。

TOEFLは、
「内容について、採点してるわけじゃない」はずですが、
内容を構成する、助動詞の使い方とか、言語的に影響を受けるでしょう。
そうすると、ネイティブ採点者は、「キモい書き方してるな。減点!」となる。

TOEFLの採点者は、学生でも社会人でも学校の先生でも誰でもなれます。私の友達も、採点しています。
ただし、ESL教育のプロが採点するわけではありません。

問題なのは、採点者が多文化に精通していないということではありません。常識的にみて、いくら広いアメリカとはいえ、海外事情や異文化に精通している人はそう多くありません。

問題は、ノン・ネイティブが書いた英作文が、「キモい」時に、
その「キモさ」が、文化に要因していることに気づかずに、ネイティブ英語採点者が減点していることを、
ETS社は、認めずに、同じような問題を出し続けていること。

「家族」「教育」関係の英作文で、儒教エリアの国々だと、
彼らの模範解答は、「目上の人や組織に従う内容」になりやすい。

親のいうことに従う「べき」である。
教師のいうことに従う「べき」である。
校則に従う「べき」である。
だからmust, should, have to, need to, などを使ってしまう。

これが、TOEFL英作文減点への入り口です(>_<) きをつけてね!


ここらへんの「べき」意識が、アメリカ社会は、うすいのです。もっと個人にとっての「家族」「教育」だと捉えられます。
せいぜい、「べき」ではなくて、「そうしたほうがよい」程度。
must, have to, need toより、せいぜい、shouldで軽く流す。


このあたりの違いについて述べている、面白い論文を3つあげておきます。

  • Kaplan, R. B. (1966). Cultural thought patterns in intercultural education. MA: Blackwell.

  • Kubota, R. & Lehner, A. (2004). Toward critical contrastive rhetoric. Journal of Second Language Writing 13. 7-27

  • Hinkel, E. (2009). The effects of essay topics on modal verb uses in L1 and L2 academic writing. Journal of Pragmatics 41. 667-683.

0 件のコメント:

コメントを投稿