2009年7月12日日曜日

要約:Cameron & et al. (1993). Ethics, Advocacy and Empowerment: Issues of Method in Researching Language  

非常に興味深い論文だったので要約します。
日進月歩の学術界にあって、15年以上前の論文でそろそろ古典とも言えるものではありますが、
よいものはいつ読んでも示唆に富むのですね。

<予習>
本稿でのエシックス、アドボカシー、エンパワーメントに基づく研究のスローガンとしてそれぞれ
"Research ON informants", "Research FOR informants", "Research WITH informants"が与えられています。エンパワーメント・モデルを推奨している論文です。エンパワーメントに関しては

パウロ・フレイレ著 小沢有作訳 『被抑圧者の教育学』 亜紀書房
イヴァン・イリイチ著 小澤周三訳 『脱学校の社会』 東京創元社

に詳しいので、合わせて読むと論文の内容がすんなりと頭に入ります。

1. Introduction
  ・言語使用とは、中立的なものではなくそれ自体が社会構成の一部となっている
  ・多かれ少なかれ全ての社会調査には言語調査を含まれていることを
   調査者は理解しなくてはならない
2. Positing researcher and researched: ethics, advocacy and empowerment
  ・調査者と被調査者を結びつける3つの要素:エシックス、アドボカシー、エンパワーメント
 →エシックスの関連要因:ガイドライン順守、情報提供者の不利益の回避、
                   倫理違反と無害なごまかし(an innocuous deception)のバランス
    →アドボカシーの関連要因:客観的事実の追求とアドボカシーの両立、”the interactive  
                   methods”による情報提供者が主体となる研究の構築
    →エンパワーメントの関連要因:フーコー流の権力理解による抑圧構造の理解、”feedback
                   technique”によって情報提供者に研究成果を伝える
3. Conclusion
  ・調査者は研究環境下での権力の複雑性を留意して情報提供者と絶えず交流
   ( a constant negotiation)を行い、権力の動的な面を理解しなくてはならない
  ・調査者・情報提供者の知識構築・相互理解のためにエンパワーメント・モデル
   によって研究を行うことは重要

趣旨の要約
今までは「被調査者」について研究を行ってきたわけだが、そこから卒業して「被調査者」とともに研究を行うべきだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿