2009年7月2日木曜日

上手にLとR発音できるかも 「心育てることが大切」指摘も

6月29日付朝日新聞、生活1に同タイトルの記事があったので以下に紹介と解説をしてみます。
朝日を購読の方はぜひ読んでみてください。データベースにアクセスできる方は「英語」で入力して日付順にするとすぐに発見できます。
まず、統計なのですが
「習い事や通信教育をしていますか?」(首都圏の母親3069名による複数回答式)

1.定期的に教材が届く通信教育:25.2%
2.スイミングスクール:21.0%
3.スポーツクラブ・体操教室:17.9%
4.英会話などの語学教室や個人レッスン:9.5%
5.ピアノやバイオリンなどの楽器:5.8%
6.幼児向けの歌や踊りなどの音楽教室:5.2%

このうち、1の一部と3が英語教育にラベリングされるとすると、少なく見積もって1割、最大で3割程度の首都圏の子どもが学校外で英語に触れているようです。1の通信教育のうち、何割が英語関連の教材なのか分からないため、大雑把ではありますが、仮に全通信教育中半分が英語関連とすると、2割くらいの子どもが学校外で英語学習をしているのでしょうか。
ここは「英語を学校外の教育機関や通信教育で勉強しているか?」という質問をすれば明らかになりますね。

この結果を踏まえて、記事では英語教育の人気は依然として高いとしています。
たしかに、英語教育は楽器や運動に比べてなんら遜色の無い人気の高さを保持しているようですね。
ふーん、そうなんだ。英語は人気なのか。幼児英語教育塾でも開こうかしら。

さて、話は変わって記事では幼児英語教育の賛否について報告しています。
要するにまとめると
<賛成派>
・LとRの聞き取りと発音ができるようになる可能性が高い
・中学校での負担が少なくなる
<反対派>
・早期教育→大人の英語力には直結しない
・美しい発音のみに執着する視線への危惧(うまい発音より、よい内容を伝えることの方が重要)
<折衷派>;反対も賛成も表明せず
・持続が大事
・楽しみながら親が一緒にかかわる姿勢が大事

内容そのものからは外れますが、限られた紙幅ながらバランス感覚に優れた記事だと思います。
スポンサーの意向をもろに反映して、教育に関する記事は「悲観論」やら「危惧論」などで新しい教育(および教育法・教材など)の必要性を煽って、教育界にお金が落とし込まれる図式になりがちですから。そのような意味で、特に煽りも無関心も装ってないので、バランスは良いかと。
とはいうものの、「結局何がいいたいの?」「それって無駄に中立を意識した無関心じゃん」といった反論もあるわけですが。」

で、解説ですね。
反対派と折衷派は文字通りそのままなので、解説の必要もないですね。
英語教育をわが子に!と思っている方は前提も前提として考えるべきことです。これらを意識しないで無頓着に英語をやらせればOKなどと考えているうちは教育界の思う壺です。
どっかファンの教育機関があって、そこのキャッシュフロー向上のために私の財産を寄付します!くらいの気持ちをお持ちの方には何も言いませんが。
賛成派なのですが、なぜこういう言説ってLとRの発音ばっかり指摘するのでしょうか?
考えてみてください、LとRを混同してなにか意味の損傷を起こしますか?
では、意味の損傷の心配があるとして、それで何か問題になったことはありますか?
その損傷、体験したことはありますか?LとRの聞き取りに失敗したことはありますか?その失敗以前に、その時に聞き取ろうとしたものがどんな内容だったかわかっていましたか?
端的にいうと、言葉を使うときには、言語背景(コンテキストといったりします)があって、それとの兼ね合いで意味を判断したりします。例えば、
妻:「あなた、電話よ!」
夫:「今、風呂だって!!」
文字通りに読むだけでは何のこっちゃ!?です。だけど、どんな場面か容易に想像できます。
電話=電話がかかっているからでなさいという命令
風呂=今、私は風呂に入っているので電話にでるのか不可能という意思表示
これらが言語背景です。背景は意味の理解を助けてくれます。
簡単にいうとですね、LとRの聞き取りはあくまで、一つの音素(まぁ、つまり「音」)の問題であって、それが違った(間違えただけ)で意味の損傷が起こるということは他の箇所がイカれている可能性大です。
例えば" wow, it's a blinding light"というべき箇所を" wow, it's a brinding right"と言っても聞き手がよほどのアホで無い限り言いたいことの意味は正しく通じます。
もし、通じないかった場合は「聞き手はアホだった」と思っておけばOKです。どうせアホには何を言っても通じません。
この例はたまたま英語に"brinding"という語が無いから通じるだけだろ!"election"と"erection"はどうなんだ?という反論もアリです。ちなみにele-とereは有名なジョークです。
この反論だって、「君はまさか、私が高尚に次期大統領選の解説をしているときに"erection"という語が発されると思っているのかい?」とすればOKです。選挙の時に"erection"と理解する方はよほどの天邪鬼かアホです。相手にしないにこしたことはありません。
なので、LとRに固執される方にはぜひともこう言ってみてください。
「うん、LとRの区別は重要っていわれてるよね。でも、それって実はあんま重要じゃないんだよ」と。
中学校の負担の話はまた今度。

1 件のコメント:

  1. LとRの議論は、英語教育業界で言われる1つですよね。
    But I wanna say, "So what?" and "What's the point of the distinction between L and R after all?"

    言語学からの、補足。
    歴史言語学的にみると、LとRは、共に流音なので、言語変化では影響をうけやすい子音同士です。LからRになったり、RからLになったり、LとRが一緒になったり(日本語のラ行のように、ポリネシア圏の一部では同化したり)。

    だから、言語普遍的には、完全に分別している子音じゃないんです。現代英語や、政治的に力をもってる国の主要言語(フランス語、中国語、、、)に、LとRの区別があるけれども。

    だから、World Englishesでは、LとRの区別がはっきりしていない話者と交流することも多いと思います。まさに、peterさんの、最後の3行には納得します。

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